この秋を生きる

ある日の朝、ふと川辺を見るとヒグマが駆けて水飛沫をあげながら

そこに遡上しているサケやマスを追いかけ捕っている姿がありました。

まだ若いこともあってか、あまり狩猟は上手くないように見えましたが、

大きな身体、全身を振るわせながらの懸命さには、まさに躍動する命、

野生動物の生きることに真っ直ぐな姿、決して近づいてはいけない怖さ、

ヒグマに限ったことではないですが、そこに意識をすべき聖域があって、

生き物への「畏怖」の念は忘れてはいけません。(実際の距離や区域ではなく)


そこの驕り高ぶった人間ども、自分の命こそ尊いと何故言える?

群がるカメラマン、俺らを撮ったそんな写真に何の価値がある?

俺らがサケを捕っているそばに来る釣り人、俺もそこにいるぞ、

わかったつもりで眺めている自然ガイド、本当にわかっているのか?

いつか怪我をさせるかもしれないぞ、命も奪うかもしれないぞ。


そんな事を思いながら、ヒグマは川には来てはいません。


その川には、秋から冬へ、春へ、生きていく為に来るのです。

ただただ生きること、それを真っ直ぐに考えているはずです。

自分の生物としての距離感は正しいのか、人間が考えるべきです。


人間に慣れてしまったヒグマもいます。ヒグマに慣れた人間もいます。

その慣れた人間の行動を見て慣れたつもりになる人間もいます。

その慣れた母熊の行動を見て慣れたつもりになる子熊もいます。

それは、町に近い森であったり、川であったり、国立公園内であったり、

こうした場所で、近年の知床で暮らす中で感じることがある、現状です。


また、もしも、何か問題のある行動をしてしまえば、

この秋を生きることが出来なくなるのは野生動物の方です。

何かがあっても秋を生きていって、いつか忘れるのが人間です。


自問自答しながら、ちょっと心が痛くなりながら眺めた僕でした。

本当はただ純粋に、ヒグマとサケの関係から生態系を感じたいのに。


つらい。



※写真は双眼鏡を通して、高台から安全が確保された距離で撮っております。

こういった説明文を毎回書かなければならないのも、きっと知床の現状です。


***** 自然ガイド 知床ころぽっくる *****

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つよし


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