海岸、行く先、行く末。

昨日のように断崖部に続く森、海を見下ろしながら幾つか越えていくと、

ちょっとひらけた海岸線が見えてきました。立ち止まると頭上にオジロワシ、

また、オオワシもいないかと観察をしていると、海岸に動く小さな黒い塊が。

もちろん何なのかは予想はついていますが、双眼鏡で確認するとヒグマでした。

(断崖部の下にある海岸なので距離としてはヒグマにも配慮しています。)

時間としては10分くらいで僕の視界から消えていきましたが、

何となく彼らの日常を垣間見ることが出来たようで嬉しかったです。

【朝陽に伸びる影、その様子があまりに神々しかったので映像にもしてみました。】

❝ 僕たちが毎日を生きている瞬間、もうひとつの時間が、確実に、ゆったりと流れている。
日々の暮らしの中で、心の片隅にそのことを意識できるかどうか、それは、天と地の差ほど大きい。❞ 

星野道夫 旅をする木(もうひとつの時間)


ただ、同時に考えたのは近年は秋になると多くのカメラマンがやって来て、

ごく一部ですがマナーの悪い方はヒグマに自ら接近して撮影をしようとし、

より綺麗な写真を撮りたいという熱意なのでしょうが、様々な軋轢をうみ、

何よりも野生動物側の立場や気持ちになっていない場面があります。

たしかにヒグマは珍しいでしょうし、きっと絵になる被写体でしょう、

それでも、その価値の尊さは生息できる自然環境の中に在ることに思います。

ですから、僕自身としてはヒグマ(だけ)を写真に撮りたいということはなく、

それを含めた風景にこそ伝えたいものがあると今回の動画にしています。

(きっと、こんな動画すらアップしないという方法もあるのでしょうが。彼らを思えば。)


ヒグマも、オオワシも、エゾシカも、エゾリスも同じく知床の命です。

彼らの日常、動画の後半のポツンといるヒグマ、それが好きな場面、

どのように人間が野生動物と関わっていくのが良いのか、考えたいです。




***** 自然ガイド 知床ころぽっくる *****